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  • 執筆者の写真朝野裕一

筋肉は共同で働く〜運動を科楽する:第2章(4)

私たちの日常生活における身体活動では、ある筋肉が単独で働くことは

まずあり得ないことです。

もちろん与えられた指示のもと、

例えば人差し指一本だけを動かしなさいと言われれば、それに見合った

最小限の筋活動だけが認められるかもしれませんが、

私たちが身体を動かす時には、何らかの目的があってすることがほとん

どですよね。となると、多くの筋肉が参加して行う場合がほとんど、

ということになります。

そこで今日は、筋肉の共同作業について考えてみたいと思います。

シナジー(synergy)という言葉があります。色々な分野で様々に使われ

ている言葉ですが、運動学では筋肉(神経筋ユニット)の共同(協働)

的な作用を指す言葉として使われています。

このシナジーという概念を定義・提唱したのが、ラタッシュ(Latash)

さんという運動学(+生理学・生体工学)の研究で有名な教授です。

私たちは身体を動かす中である目的を持った動作(task)をします。

物を持ち上げるとか、握るとか、椅子から立ち上がるなど。

そのための筋肉の働きにはいくつものバリエーションがあるのですが、

何れにしてもある目的のために、いくつかの筋肉が共同(協働)して

働きます。

昨日も書いたように、ある関節の動きには動筋と拮抗筋が存在し、

動筋が最適に働くためには、拮抗筋が弛緩していなければなりません。

同時に関節を固定する筋肉も働いており、それを固定筋と呼びました。

さらに、同じ作用をもたらすいくつかの筋があって、それらを協働筋

と呼ぶことがあります。

例えば、

肘を曲げる主な筋(主動作筋)は上腕二頭筋と言って、力こぶを見せる

時の筋肉ですが、それには上腕筋とか腕橈骨筋という別の肘を曲げる

作用を持つ筋肉が存在しています。

これらが共同で働く場合が多く、まさしく共同(協働)作業をする

協働筋ということになります。

また、

スクワットとか椅子から立ち上がる動作では、股関節・膝関節・足関節

などが共同して働きます。

これらも様々な筋肉が働くということでは、広い意味での協働筋と言え

るでしょう。

そして、この協働作業はそれぞれが役割を分担しながらタイミングよく

働く必要があります。

お互いがシェアしている感覚です。

もしある筋肉(群)がうまく働けなければ、そのほかの筋肉(群)で

補うことも可能です。

いわゆる代償作用で、その際の動きを代償運動と呼ぶこともあります。

また、

動く目的が異なれば、参加する筋肉群も異なってきます。当然ですが、

物を握る時と椅子から立ち上がる時には働く筋肉が違ってきます。

まとめると、

筋肉の共同(協働)作業=シナジーには、シェア、補償作用と目的動作

依存(task-dependence)の三つの構成要素があるということです。

なんだか難しい話になってしまいましたね。

でも言っていることは簡単です。

お互いが共同で一つの目的のために働き、不調な部分は他で補い合う。

どんな社会でも認められる作業です

そして、

なぜそんな話を持ち出したかというと、ある一つの筋肉だけをクローズ

アップし過ぎると、この筋肉の共同作業の絶妙な役割を軽視してしまう

のではないか?と考えるからです。

例えば、

体幹筋群であるコアマッスルを鍛えようとしましょう。

なぜそもそもコアを鍛える必要があるのか?をよく考えておいたほうが

いいでしょう。それが不足している不自由度と比べた時、うまく働く

効果の程度を実感できることになります。

コアが弱ければ、四つ這い位でのバランス保持がしづらかったり、

身体の位置を変えるときにバランスを崩したりしやすくなります。

でも、シェアしているほかの筋肉などで補うので、なんとかできた

りもします。

でも、

その他の筋作用が別の関節を必要以上に動かし、そこに支障が生じて

くるなんていうことも、しばしば体験することです。

ですから、メインの・主動作たる筋肉群のバランスのいいシェア作用を

意識していることが、大事になります。その動作が最適に目的に見合っ

てできているかを判別できることになります。

その上で、十分に働いていない筋肉(群)を鍛えるという、目的をはっ

きりとさせたトレーニングをすれば、その効果を発揮することができる

と考えています。

また、

最適といえば、目的動作(task)が明確でも、周りの環境が異なれば、

違った戦略が求められます。

つまり、違った筋肉群の作用を補足する必要があったりもします。

最終的な結論。

筋肉を鍛える時には、なぜ?どんな目的で行うか、それが達成された

後の身体の動きの変化を感知できるか、そこまで考えた上で行うことが

望ましいと考えます。

ちょっと難しそうな話になりましたが、引き続き筋肉の話は続きます。

今日も読んでいただき、ありがとうございました。また明日。

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